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【妊娠中期】気づかないうちの流産とは?原因や流産しやすい行動を解説

2024.04.24

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

自覚症状などがなく気づかないうちに起こる流産もあると聞くと、不安に感じる方は多いのではないでしょうか。

流産といってもその種類や原因など多岐にわたり、なかには原因がはっきりしない流産もあるものです。

ここでは気づかないうちに起こる流産から、流産しやすい行動や原因、兆候、もし流産があった場合はその後にどうするか、解説します。

妊娠中期の流産

妊娠中期の流産には大きく分けて2種類があります。
ここでは稽留流産と進行流産、その他に流産に関連することについて説明します。

症状のない流産は「稽留流産」

稽留流産 (けいりゅうりゅうざん)は、お母さんの体の中で赤ちゃんが亡くなっているにも関わらず、お母さんには自覚がない状態のことをいいます。

胎児がお腹の中で死亡していても、お母さんが出血や腹痛などを感じない場合があるのです。
診察時に稽留流産であることが発覚するケースがあるでしょう。

進行流産

進行流産は出血が起こり、子宮内容物が体外に出てきている状態です。
進行流産は完全流産と不全流産により細分化されます。

完全流産は子宮内容物の全てが体外に出た状態であり、不全流産は子宮内容物の一部が体内に残っている状態です。

完全流産の場合は経過観察か子宮収縮剤などの使用によって対処できることが多いですが、不全流産だと出血のコントロールのために子宮内容除去手術をすることがあります。

その他に流産に関すること

流産の定義は、妊娠22週目までに妊娠が中断されることです。
妊娠12週未満で起こる流産を早期流産、12週以降から22週未満の流産を後期流産といいます。

後期流産の場合は死産となるため、死産届の提出が必要となります。
また、妊娠22週以降は早産に分類され、生まれた赤ちゃんを救命できうる週数とされています。

若年出産や高齢出産、低身長、肥満、持病、過去に流産や死産などの経験を繰り返したことがあるなど、妊娠中の合併症に注意が必要な要因を持って妊娠することをハイリスク妊娠といいます。

ハイリスク妊娠に該当する場合は、その項目にもよりますが、妊娠中や出産時に合併症が起こる可能性が、ハイリスク妊娠でない方よりも増加します。

年齢と流産の関係では、年齢が上がるに連れて流産の確率も増加傾向です。
20代では10%前半だった流産率が、30代で10%半ばから20%半ば、40代では50% 近くになるという研究結果があります。

妊娠中期に流産しやすい行動

流産しやすい行動には、以下のものがあります。

・持病の治療を自己中断する
・喫煙や飲酒

糖尿病や甲状腺疾患など、元々持病があって通院が必要にも関わらず、通院を自己中断してしまうと流産のリスクが高まる可能性があります。

また、タバコやアルコールは妊娠に悪影響でしかありません。喫煙している方でも妊娠が発覚した時点で禁煙してください。同居する人が喫煙する場合は外で吸ってもらうなどして、受動喫煙もなるべく避けましょう。

妊娠中期の流産の予防

ここからは具体的な流産の予防方法について説明します。
タバコやアルコール、医薬品など、体に影響のあるものに注意を配りつつ、できるかぎり安静に過ごすことが大切です。

禁煙

タバコには体に有害なニコチン・一酸化炭素・タールだけでなく、発がん物質であるダイオキシン・カドミウム・ホルムアルデヒド なども含まれています。
流産・早産・死産・低出生体重・先天異常・常位胎盤早期剥離・妊娠高血圧症候群などさまざまな合併症につながり、場合によっては母体や胎児の命にも関わる場合があるため、妊娠中は必ず禁煙しましょう。

禁酒

飲酒量が増えれば増えるほど早産や流産のリスクが高くなるといわれています。
胎児性アルコール症候群といって特徴的な顔面、発育や中枢神経に問題が起こることや、奇形につながることもあるでしょう。
タバコと同様に、アルコールも必ず避けておきたいものです。

薬を飲むときは医師に相談

妊娠中にお薬を使用したいときには、注意が必要です。
自己判断で薬を飲むことは控え、気になることは医師や薬剤師に相談しましょう。
お薬の中には流産につながらなくとも、赤ちゃんに他の異常が生じることもあります。

妊娠前にできること

妊娠前には、風疹・麻疹の予防接種をしておくこと、基礎疾患の治療をしっかりしておくこと、禁煙・禁酒をしておくことなど、妊娠前から流産の予防のためにできることがあります。妊娠を意識したら、葉酸のサプリメントも服用しましょう。
また、身体的・精神的に健やかな状態を作っておきましょう。

妊娠中期の流産の原因

妊娠中期の流産の原因となることを紹介します。
女性器に関連する疾患や生活習慣などが流産の原因となる場合もあります。

流産は妊娠初期の方が起こる割合は高いですが、妊娠中期 でも起こりえます。

いずれもお母さんに原因があるものばかりではないことは覚えておきましょう。

絨毛膜羊膜炎・子宮頸管炎

絨毛膜と羊膜は子宮の中で赤ちゃんを包んでいる組織であり、子宮頸管は膣と子宮をつなぐ部分です。
妊娠中は免疫力が低下しているため、子宮内で細菌が増殖しやすくなり細菌性膣炎を起こすことがあります。
細菌感染によって子宮頸管が柔らかくなることや、子宮が収縮しやすくなることから流産につながりやすくなります。

子宮奇形

子宮奇形は、子宮が一般的な形とは異なることを指します。
これによって大きくなっていく胎児を子宮内で保持しておけず、流産になってしまうことがあります。

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。
妊娠によって腫瘍に血液供給が増え、腫瘍が壊死を起こしたり、細菌感染を起こしたりするがありますが、これによって強い痛みが生じることがあります。
この強い痛みや感染症によって子宮が収縮しやすくなり、流産につながることがあります。

子宮頸管無力症

子宮頸管は子宮口と膣をつないでいる器官であり、子宮頸管が弱くなり子宮口が開いてしまうことを子宮頸管無力症といいます。
お腹の張りや不正出血などの自覚症状がないまま起こることがあるため、注意が必要な症状です。
子宮頸管無力症が起こる確率は約1% ですが、流産や早産の原因の約20%は子宮頸管無力症 だといわれています。
子宮頸管無力症は繰り返しやすく、それによって流産を繰り返す方もおられます。子宮頸管無力症と診断された場合は、早産を予防するために子宮頸管を糸で縛る処置をすることがあります。

絨毛膜下血腫

妊娠初期から中期にかけて、胎児を包む袋の外側に血腫が生じることがあります。血腫が大きい場合や感染が合併している場合に流産率が上昇するとの報告がありますが、一方で血腫の大きさと流産率の関連性はないという報告 もあります。

子宮頸部円錐切除

子宮頸がんの初期の治療として、子宮頸部を円錐状に切除することがあります。
この手術を経験された方は子宮頸管が短くなっている傾向にあり、流産となる可能性が高くなることが知られています。

その他の疾患

感染症や重度の甲状腺異常、重度の糖尿病、高血圧、慢性腎症なども流産の原因となる場合があります。
また、流産を3回以上繰り返す場合は、妊娠はできても赤ちゃんが育たない不育症の定義に当てはまります。

生活習慣

喫煙・飲酒・肥満や糖尿病などが流産につながる場合があります。妊娠中は禁煙、禁酒を心がけましょう。医師の許可のもと、週に150分程度の有酸素運動を行うとよいでしょう。体重の増えすぎを防ぎ、出産に向けて体力をつけることができます。

妊娠中期の流産の兆候

一般的に、流産の兆候には出血・腹痛・腹痛などが挙げられます。
いずれも妊娠中には身近な症状ですが、兆候を見逃さないためにも、注意深くご自身の体調を観察しておくことが大切です。

出血

妊娠中期は妊娠初期に比べると、出血することも少なくなります。妊娠中期に出血があった場合は、かかりつけの産婦人科に受診すべきかどうかを相談しましょう。

腹痛・お腹の張り

妊娠中は、お腹の痛みや張りなどは起こりやすいものです。
しかし、これらの症状が10分おき、15分おきなど規則的に起こっている場合や、休んでも治らない場合はかかりつけ医に受診すべきか相談しましょう。

腰痛

妊娠中は出産に向けて、骨盤の関節を緩めるリラキシンというホルモンが分泌されます。
この働きによって、腰痛を感じる方も多くおられますが、あまりにも激痛に近い腰痛だったり、周期的に痛んだりする場合は産婦人科で相談することをおすすめします。

おりものの変化

おりものが魚のように生臭いなど匂いに変化がある場合や、灰色に近いなど色に変化がある場合、おりものの量が増えたときなどは、細菌性膣炎である可能性があります。発熱や明らかな腹痛がある場合は、すぐにかかりつけ医に相談してください。

妊娠中期に流産があった後のこと

もし流産を経験してしまったら、次の妊娠でも流産を繰り返してしまうのではと心配になる方もおられるのではないでしょうか。

しかし、2回目の流産を起こす反復流産の確率や、3回以上繰り返す習慣流産は数%といわれています。

流産によって計り知れないショックを感じる方も多くおられるため、そのときに感じた悲しみを抑えずに過ごすことも大切です。感情の整理は、また前を向けるようになったときにするくらいの気持ちでよいでしょう。

2回目の妊娠で流産となってしまう可能性はゼロではないものの、無事に次の妊娠で出産できたお母さんが多くおられるのも事実です。

流産の原因の全てがお母さん側にあるのではなく赤ちゃん側にある場合もあり、流産の原因を明確にするのが難しい場合もあります。

自分を責めずに過ごして、自然と次をどうしていくかを考えられるようになるまで待つことが大切です。

まとめ

妊娠中の気づかないうちに起こる流産は稽留流産といいます。
流産には予兆のあるものもあれば予兆がない場合もあり、それらの原因も多岐にわたります。
今回紹介した予防法を取り入れつつ、ご自分の状態を把握するように心がけてください。

いつもと違うことや少しでも不安があることは、「こんな些細なことで申し訳ない」とは思わず、かかりつけ医に遠慮なく相談してくださいね。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。