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妊娠初期はカフェイン摂取量に注意!妊娠中のコーヒーは1日何杯?

2024.02.27

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

「妊娠初期にカフェイン入りの飲料を飲んでしまった けれど、大丈夫…?」
「カフェオレが好きで毎日 飲んでいたけど、これからはよくないのかな…」

コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェイン。
日常的に摂取している方が多いこともあり、妊娠してから摂取をしてもよいのか不安に思う方が多いのではないでしょうか。

ここでは妊娠初期のカフェイン摂取が気になる方に向けて、カフェインの摂取量や過剰摂取によるリスク、妊娠中におすすめの飲料などについて説明します。

カフェインとは

炭酸飲料やコーヒーなどに含まれるカフェインですが、その働きについて詳しく知らない方もいるかと思います。
ここではカフェインの働きと、カフェインが体内で代謝される時間について説明します。

カフェインの働き

カフェインの代表的な働きといえば、眠気対策や集中力アップなどがあり、体内での具体的な作用としては、中枢神経の興奮・利尿作用・血管収縮作用・胃酸分泌・基礎代謝上昇などが挙げられます。

カフェインは用量を守って摂ると、眠気を防ぐことや疲労感を抑えること、運動機能を高めるなどの作用が期待できるでしょう。

一方、摂り過ぎるとめまい・心拍数の増加・不眠・興奮・不安・下痢・吐き気などが起こる可能性があります。過剰摂取によって思わぬ体調不良を起こすことがあるため、注意が必要な成分ともいえるでしょう。

また、カフェインは胎盤を通って赤ちゃんに届く成分です。
赤ちゃんへの影響は まだ明らかになっていない点もありますが、胎盤の血管を収縮させて胎児発育不全を引き起こす可能性があるとも考えられています。

お腹の中の赤ちゃんは肝機能が未熟なため、カフェインの代謝に時間がかかってしまいます。
お母さんがカフェインを摂取することによって、胎児が長い時間にわたってカフェインにさらされることになる点は留意しておいた方がよいでしょう。

代謝される時間

体質によって差はありますが、一般的には2時間から8時間ほどでカフェインが代謝されると考えられています。

妊娠中はカフェインの代謝速度が緩やか になるため、6時間から16時間ほどは体内にカフェインがとどまると考えておいた方がよいでしょう。

個人差はあるものの、妊娠後期や出産間近になると、妊娠していないときの1/3ほどのカフェインを代謝できなくなるといわれています。

なぜ妊婦はカフェインを控える方がよいのか

ここからは妊婦さんがカフェインを控えた方がよい理由について説明します。カフェインが神経系を興奮させることや赤ちゃんへの影響がまだ研究段階であること、過剰摂取によるリスクなどについて覚えておくとよいでしょう。

カフェイン摂取により神経が興奮する

カフェインは中枢神経系や末梢神経系など神経を興奮させます。中枢神経とは脳と脊髄 のことです。体中のさまざまな部位から送られてきた信号を受け取り、全身に指令を送り出す役割があります。

一方で、末梢神経には体の各部位からの信号を中枢神経に伝える働きがあります。役割によって末梢神経は運動神経・感覚神経・自律神経の3つ に分類されています。

これらの神経は体のさまざまな機能に影響しているため、カフェインの摂りすぎによって血圧の上昇や不眠などが起こる場合があるでしょう。

赤ちゃんへのリスクについて研究がされている

胎児の発育や流産、早産に関する研究が現在もされています。胎児の発育については、カフェインが関係するという報告と関係がないという報告が混在しており、結論がまだ出ていない状況です。

また、妊娠初期に多くのカフェインを摂取することにより流産のリスク増加につながる報告や、妊娠中のカフェインの摂取が多いと胎児の成長を阻害したり、低体重につながったりする可能性があるともいわれています。

少しでも心配だと感じるお母さんはカフェインの摂取を控えた方が安心でしょう。

過剰摂取によるリスクがある

妊婦さんの場合はカフェインの過剰摂取がさまざまなリスクにつながる場合があります。お母さんへの影響としては、不眠などの睡眠障害・不安やイライラ・血管収縮作用による高血圧や頭痛・胃痛・吐き気・嘔吐・下痢などが挙げられます。

カフェインは神経系だけでなく消化器系にも影響を与えるため、胃痛・吐き気・下痢などを起こす要因にもつながるでしょう。

また、カフェインには利尿作用がある点にも注意が必要です。妊娠中は代謝がよくなって汗をかきやすくなり 、便秘予防、血栓症予防などのために水分を摂っておきたい時期ですが、カフェインの利尿作用により水分が排出されやすくなります。

お腹の赤ちゃんに対するリスクとしては、カフェインの過剰摂取で低酸素状態や低体重のリスク増加が挙げられます。研究段階ではありますが、早産や流産などのリスク増加も懸念 されるでしょう。

妊娠初期のカフェインの摂取量

妊娠初期のカフェイン量は、コーヒーだとコーヒーカップ1杯を150mlとして約2杯から3杯(200mgから300mg)が摂取の目安量となります。

カフェインの摂取量の目安は国やガイドラインなどによって異なります。
例えば、世界保健機関(WHO)では上限を300mg、 英国食品基準庁(FSA)では200mg以下がカフェインの摂取量目安とされています。

これらを考慮すると200mgから300mgであれば摂取しても過剰摂取にはならない場合が多いと考えられますが、個人の体質によってはより少ない量でも体調に変化を感じるかもしれません。

カフェインは個人で感受性に違いが大きく、妊娠中は体調が変化しやすい時期です。
ご自分の体調なども考慮して、医師と相談しながら摂取量を意識しましょう。

カフェインが含まれている飲料・食品とその含有量

続いて、具体的にどのような食品にカフェインが含まれているのかを説明します。
飲料や食品、他に注意が必要なものについて確認しておきましょう。

飲料

カフェインが含まれる代表的な飲料には、コーヒー・紅茶・玉露・烏龍茶・番茶・玄米茶・コーラ・エナジードリンクなどが挙げられます。

それぞれ100mlあたり、コーヒーなら60mg、紅茶なら30mg、玉露は160mg、烏龍茶や番茶などは10mgから20mgほどのカフェインが含まれているでしょう 。

商品にもよりますが、100mlにつきコーラは10から13mg 、エナジードリンクであれば32mgから300㎎ほどのカフェインが含まれることが多い傾向です。
エナジードリンクの中にはかなり多くのカフェインが含まれるものもあるため注意しておきましょう。

ココアにもカフェインが含まれていますが、ココアパウダー100mgあたりに約6.8mg と、他の飲料よりも少なめです。

食品

カフェインが含まれる食品はチョコレートが代表的です。チョコレートの原料であるカカオマスにカフェインが含まれており、ミルクチョコレートだと、一般的な量である50gあたりに14mgほどのカフェインが含まれています。

カカオ70%などのハイカカオのチョコレートだと含まれるカフェインの量も増えるため、50mgあたりで42mgほどのカフェインが含まれると考えておくとよいでしょう。

一方で、ホワイトチョコレートはカカオマスから絞られたカカオバターが使用されています。含まれるカフェイン量はミルクチョコレートよりも少ないです。

他に注意が必要な飲料・食品

注意が必要な食品として、一部のハーブティーが挙げられます。ハーブティーの多くはカフェインレスですが、飲み過ぎによって子宮収縮を促す作用を持つものがあるため注意が必要です。

無理せず飲むくらいの量であれば大きな問題はないことがほとんどですが、レモングラス・ローズマリー・シナモン・リコリス・マテ・ジャスミン・カモミール・ハトムギ などは飲み過ぎないようにしておくとよいでしょう。

ハーブティーに限らず、ウコン・サフラン・セージ・センナ・ナツメグ・ワイルドチェリー なども、体調が変化しやすい妊娠中は避けておくことをおすすめします。

また、コーヒーや紅茶に含まれるタンニンという成分は鉄分の吸収を妨げることで知られています。デカフェと呼ばれるカフェインレスのコーヒーにもタンニンが含まれている ため、カフェインレスだからといって一日に何杯も飲むのは控えた方がよいでしょう。

妊娠中におすすめのノンカフェイン飲料

麦茶・ルイボスティー・黒豆茶・そば茶・フルーツジュース・ノンカフェインの清涼飲料水・青汁などがおすすめです。

また、ケールなどが含まれる青汁にはカフェインが含まれておらず、妊娠期に摂っておきたい葉酸・ビタミン類・鉄分・食物繊維などが含まれています。

最近では飲みやすさも考えられた青汁も多く販売されているため、栄養補給に役立ててみてはいかがでしょうか。

まとめ

妊娠初期のカフェインの摂取について説明しました。日本では明確な摂取量について定められていませんが、WHOや海外の基準値を考えると1日あたり200mgから300mgまでの摂取にとどめておくことが推奨されます。

もし妊娠中にカフェインを過剰摂取すると、赤ちゃんの発育に影響が出て低体重となってしまうリスクなどがあります。加えて、カフェインの摂りすぎは早産・流産のリスクを増加させる可能性があるとの報告もあり、まだ結論が出ていない状況でもあります。

必要以上に神経質になることはありませんが、目安量を守って摂取することを心がけましょう。少しでも気になる方はカフェインが含まれる飲料や食品を控えて、今回紹介したノンカフェイン飲料を活用して妊娠期を過ごされてみてはいかがでしょうか。

カフェインの感受性や体質には個人差があるため、医師と相談しつつ、無理のない生活習慣を決めてくださいね。

記事監修

島袋朋乃先生

日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医
日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属

プロフィール

平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。