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「むし歯は大人から感染する?」

2024.02.01

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

離乳食の時期は親の管理の下で食事をしてきましたが、幼児期に入ると大人と一緒に食事を楽しむ機会も増えてきます。
外食などでつい食事をわけっこしたりする時、親御さんやおじいちゃんおばあちゃんが御自分の口で切って小分けして赤ちゃんやお子さんにあげたり、同じお箸やスプーンで食べさせたりしていませんか?
親しく愛情があるからこその風習かもしれませんが、実はこれがむし歯を作る原因のひとつになっているかもしれません。

妊娠中からむし歯の治療をしていたまたはむし歯が無いお母さんの方が、むし歯のあるお母さんより、お子さんの虫歯の発生率が少ないということが遺伝的な要素だけでなく生活習慣や健康リテラシーの違いによる影響があるのではと言われています。

食事の時の口移しもありますが、日々のスキンシップを通して子どもは親や大人の唾液に接するので、最近の研究では生後4か月に母親の口腔細菌が子どもにうつっているということも確認されています。

うつった菌はすぐには活動しませんが、お子様の口の中に当たり前に存在してむし歯菌(ストレプトコッカスミュータンス等)が活動しやすい状況が出来ると(プラークが歯についたままとか、甘いもの、ショ糖を沢山食べたり規則正しく食べるのではなくダラダラ食べたりとか)活動を始めてむし歯を作ります。

生後19ヶ月から31ヶ月(平均26ヶ月)の間に初感染が集中しており、この時期は感染しやすい時期と言われています。

ただ、う蝕に関連する複数の要因を調べた研究では、3歳児における食器の共有とう蝕の関連性は認められていませんし、スキンシップは子どもの心の安定にも大切なことですのであまりピリピリと神経質にはならないで下さい。

親から子どもに菌がうつったとしても毎日の生活の中で砂糖を控え、ダラダラと不規則な食事のとり方をせず仕上げ磨きで歯垢を取り、フッ化物を利用することでむし歯予防は出来ます。
フッ化物配合の歯磨き剤や洗口剤を上手に取り入れていきましょう。

また、親や周りの大人自身が口腔を清潔にしておくことがまずは大事かもしれませんね。
子育てしながら実は親、大人が自分自身の生活習慣を見直すきっかけになるかもしれません。
子育てって親育てともいわれますものね、有り難いことです。

記事監修

安田恵理子先生

日本口腔衛生学会専門医
日本産業衛生学会 産業歯科保健部会長

プロフィール

1988年 朝日大学歯学部卒業後、神戸市立中央市民病院歯科口腔外科研修医から歯科医師としての臨床スタートをし、兵庫医科大学大学院(口腔外科)で医学博士取得。子育てを通して予防の大切さを感じ、現在、大阪歯科大学歯学部口腔衛生学講座非常勤講師、COH労働衛生コンサルタントとして教育および企業での健診など予防啓発活動に従事し、またクリニック勤務で歯科臨床にも携わっている。