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妊娠中期のティッシュにつく程度の出血の原因や対処法|妊娠初期の出血との違いも説明

2023.08.01

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

安定期と呼ばれる妊娠中期ですが、ティッシュにつく程度の出血があった場合は心配になる方が多いのではないでしょうか。妊娠中期では妊娠初期とは違って、赤ちゃんが育ったからこそ現れる病気が潜んでいる可能性があります。

ここでは妊娠中期の少量出血が気になる方に向けて、少量出血の特徴や受診の基準、原因、関連する病気、また出血予防のための過ごし方について説明します。

妊娠中期:ティッシュにつく程度の出血の特徴

妊娠中期には出血がないといわれていることもありますが、何らかの原因でティッシュにつく程度の出血を経験される場合があります。

また、出血の理由には、妊娠の継続と関連が少ないものから、切迫早産や常位胎盤早期剥離などと妊娠の継続に関わるものまでさまざまです。

妊娠中期の出血に伴うものとして、22週未満では切迫流産、22週以降になると切迫早産などがあり、注意が必要になります。

妊娠中期:少量出血で受診するときの基準・対処法

妊娠中期にティッシュにつく程度の少量の出血があった場合、出血の性状次第で対応が異なります。

基本的に、赤色やピンク色だったり鮮血であったりする場合は、少量であっても受診する方がよいでしょう。他にもサラサラした血や、レバーのような血の塊、生理2日目のように出血量が多い場合も、すぐに受診することをおすすめします。

一方、赤褐色や茶色で出血量が少なく痛みもない場合は、いったん安静にして、次の診察のときに伝えるとよいでしょう。

ただし、妊娠中期の出血は、赤ちゃんや母親の体に何か起こっている可能性が考えられるので、次の診察まで期間が空く場合は早めに診てもらう必要があります。出血量や腹部の痛みなどが増していく場合も、受診する方がよいでしょう。

診察を受ける以外の対処法としては、出血をしている場合は体を冷やさないことや、出血量が増えないよう体を動かさないことなどが挙げられます。

また、「胎動があるなら腹痛があっても大丈夫」ということを聞いたことがある方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。自己判断で診察を受けないでいると症状が悪化するので、少しでも不安を感じたら、診察を受けましょう。

妊娠中期:少量出血の原因

ここでは、妊娠中期の出血原因として考えられることについて説明します。

動き過ぎ

運動などによって動き過ぎると腟(ちつ)から出血を起こすことがあります。具体的には、長時間の立ち仕事、息が切れるくらいの激しい運動、おなかの圧迫、買い物で重たい荷物を持つことなどが出血の原因となります。これらは避けたい動作です。

疲労がたまることによって子宮が収縮し、赤ちゃんへ血液が送られにくくなり、長期的にこの状態が起こると切迫早産のリスクが高まります。

びらん・ポリープ

子宮腟部にできるびらんや、子宮頸(けい)管ポリープも出血の原因の一つです。

びらんは、卵胞ホルモンであるエストロゲンの分泌により粘膜部分が充血し、腟に面した部分がただれたように見える状態のことです。内診や性交、タンポンなど、何らかの刺激によって出血することがあります。

子宮頸管ポリープは、キノコの形のような良性腫瘍のことです。子宮頸管ポリープができる原因は明確になっておらず、女性ホルモンや細菌感染との関係が考えられています。痛みはないことが多いのですが、出血しやすく、放置すると症状が悪化する可能性もあります。

どちらも妊娠中の出血としては多い原因であり、妊娠継続に影響することは多くありません。

びらんでは、ピンクのおりものや茶色の血が出ることもあります。ピンクのおりものが続くときや、茶色の出血量が増えたときなどは医師に伝え、相談しましょう。

前置胎盤・低置胎盤

前置胎盤や低置胎盤は、本来であれば子宮の上の方に作られる胎盤が、通常よりも低い位置に作られることです。
胎盤が低い位置に作られると、赤ちゃんが出産のときに通る内子宮口という場所が、胎盤によって塞がれてしまうリスクがあります。

前置胎盤は、内子宮口に胎盤の辺縁が触れる状態を辺縁前置胎盤、内子宮口の一部が塞がれた状態を部分前置胎盤、全部が塞がっている状態を全前置胎盤と分類でき、基本的に全て帝王切開による出産となります。帝王切開であっても大出血になりやすいため、お母さんの命に関わることがあります。

また、低置胎盤は胎盤の位置が低いものの、内子宮口が塞がれていない状態のことです。

前置胎盤や低置胎盤は、経腟超音波検査を行うことで妊娠20週前半頃から疑われ、妊娠30週頃に診断されることが多いでしょう。また、必要に応じ、MRI検査を行います。症状として、痛みなどはありませんが、警告出血という急な出血をする場合があります。

出血は妊娠28週以降に起こりやすいと考えられていますが、内子宮口の近い場所に胎盤が作られると、妊娠28週以前に出血することもあるため、注意が必要です。

切迫流産・切迫早産

あと一歩で流産もしくは早産する状態を、それぞれ切迫流産、切迫早産といいます。流産の定義は妊娠22週未満で妊娠を終えることです。赤ちゃんがお母さんの体の外で生きていけない週数のうちに妊娠が終わることを流産といいます。早産は、日本においては妊娠22週から37週未満で出産することです。

どちらも出血を伴うものであり、破水、異常な腹痛、規則的な腹痛がある場合は診察を受けましょう。感染症によって流産や早産が起こる場合もあるので、おりものから異臭を感じたときも注意しておきましょう。

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離は、妊娠中に何らかの原因で胎盤が剥がれてしまい、赤ちゃんとお母さんの双方に命の危険が及ぶ病気のことです。

胎盤は妊娠中に子宮の中で作られる器官です。へその緒として知られる臍(さい)帯という細い管を通じて、赤ちゃんに栄養や酸素を届けています。胎盤が剥がれると赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶことができなくなり、大量出血が起こる危険性があります。

症状としては腟からの出血が起こり、腹部の痛みやおなかの張りなどを伴います。特に腹部痛においては、おなかが全体的に非常に硬くなり、いわゆる板状硬(板のように硬くなる状態)になることもあります。出血があった場合は、少量であっても常位胎盤早期剥離の可能性を確認することが大切です。

また、常位胎盤早期剥離は、持続的な痛みで発覚することもあれば、急な激痛によって発覚することもあります。

妊娠中期:妊娠には影響のないことが多い出血や病気

妊娠に影響のないことが多い出血や病気について説明します。

上述の通り、子宮腟部にできるびらんや子宮頸管のポリープなどは、出血しても心配し過ぎる必要はないといわれていますが、自分で判断せず、医師に確認してもらうようにしましょう。

早期に発見できれば怖くない症状であっても、放置することによって悪化することがあったり、びらんやポリープだと思っていたら別の病気による出血だったりすることも考えられます。

また、痔(じ)や内診による出血も妊娠には直接影響のないものです。
妊娠中期はホルモンバランスの変化や大きくなった子宮が胃腸などを圧迫することにより、便秘や下痢などの症状が現れます。便秘でいきみ過ぎて痔になってしまうケースがあり、切れ痔だと赤い血(鮮血)が見られます。排便すると少量出血があります、気になる場合は医師に相談しましょう。また、内診後の出血では、少量で茶色の出血が、内診の数日後に見られることもあります。

妊娠中期:少量出血の予防や普段の過ごし方

続いて、早産予防のための過ごし方について説明します。
栄養バランスの取れた健康的な食事をし、体を冷やさないように過ごすことが大切です。温かい服装をすることや、食事や飲み物もできるだけ温かいものを摂ることをおすすめします。

妊娠中期はおなかが大きくなるので、おなかを圧迫する姿勢は避けましょう。前かがみになるとおなかが圧迫されてしまいます。横になるときは、仰向けだとおなかが圧迫されるため、横向きに寝るとよいでしょう。

体を動かすときは、かかとの低い履き物で行動し、重い物の持ち運びや、高いところにある物を触らないようにしましょう。おなかが大きくなることによって、体を動かしづらく、負担がかかりやすくなっています。

性行為をする場合は体調に無理のないように、感染症や精液の侵入を防ぐためにコンドームは毎回使用しましょう。精液や、乳頭や乳房などの胸への強い刺激には子宮を収縮させる働きがあるため、気をつけるとよいでしょう。

まとめ

妊娠中期の少量出血について、診察を受ける基準や対処法、関連する病気について説明しました。

ティッシュにつく程度の出血であっても、鮮血に近い場合は受診することが大切です。茶色い出血でも次の診察まで日数があるときは待たずに、早めに病院を受診しましょう。

妊娠中期に出血を伴う病気で注意が必要なのは、前置胎盤、低置胎盤、切迫流産、切迫早産、常位胎盤早期剥離などです。

また、心配し過ぎなくてもいいものとして、びらんやポリープ、痔、内診後の出血を紹介しました。

妊娠中に出血があった場合、自己判断はせずに必ず医師に症状を伝えて自分の状況や赤ちゃんの状態を把握しておきましょう。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。