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妊娠中期におなかがパンパンで苦しい... 原因・対処法・注意が必要なときについて説明

2023.08.26

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

妊娠中期のおなかの張りは、パンパンで苦しく感じる場合や、キューっとする感じなど、人によって感じ方がさまざまです。中には、「病気や何らかの症状が隠れているのでは」と不安を感じる方も少なくないのではないでしょうか。ここでは妊娠中期のおなかの張りが気になる方に向けて、パンパンなときの特徴や張りの原因・対処法、注意が必要なときなどについて説明していきます。

おなかがパンパンなときの特徴

おなかが張る感じは、膨満感や子宮が収縮してキューッとなる感じ、また、子宮自体が大きくなることや、それに伴って周辺の靱帯が引っ張られる感じなどが挙げられます。

妊娠中期のおなかの張りは、子宮がキューっと硬くなる、バレーボールのように硬くなる、風船が膨らんだような感じになる、おなかの中から圧迫されている感じになるなどと表現されることもあります。

妊娠中期におなかがパンパンな原因

まずはおなかがパンパンになる原因やおなかが張る原因について説明します。主には、日常生活や妊娠に伴うもの、病気によって膨満感や張りを感じることが考えられます。

冷え

体の冷えがおなかの張りの原因となることがあります。冷えは子宮の血管や筋肉の収縮を起こすことから、おなかの張りにつながる場合があります。

疲労・ストレス

疲れやストレスが原因になり、子宮筋の収縮によっておなかが張っていると感じる場合があります。仕事や家事だけでなく、ウォーキングなどの運動のしすぎで体が疲れているときに、おなかの張りを感じやすくなります。

またリラックスしているときの子宮は緩んでいるものですが、何かに驚いたときや感情が大きく動いたときなど、ストレスが自律神経に影響して子宮の収縮につながる場合があります。

締めつけ

衣服などによって物理的におなかが締めつけられているとき、おなかが張った感じがする場合があります。衣服や腹帯などは自分のサイズに合ったものを身につける方がよいでしょう。

また、おなかをさすったり、軽く押したりすることも子宮の収縮につながります。赤ちゃんの様子は気になるものですが、触りすぎると張りの原因になるため注意が必要です。

便秘

便秘がおなかの張りの原因となる場合があります。妊娠により黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が多くなると、便から水分が吸い取られて硬くなってしまったり、消化管の平滑筋の動きが抑制され、腸の動きが悪くなったりするため、便秘になりやすい状態となります。便秘によって、ガスがたまることからおなかがパンパンになったと感じやすくなります。

また、妊娠で頻尿になる方もいるため、尿がおなかの張りの原因となる場合もあります。人によっては、尿を出したあとに張りを感じるかもしれません。

胎動

妊娠中期は赤ちゃんが大きくなり始める時期です。赤ちゃんがおなかを蹴るなどの胎動によって、おなかの内側から圧迫感が生じ、張りにつながることがあります。

双子

単胎よりも双子の方が子宮が早く大きくなるので、おなかの張りも感じやすくなります。双子が原因で苦しい感じや、かゆみを感じることなどもありますので、張り以外の症状がある場合は双子であることが張りの原因と考えられるでしょう。

性行為

性行為をすることでおなかの張りを感じることもあります。妊婦健診で問題がなければ性行為はしてもよいですが、気分が乗らないときや何かしら不調や症状があるときは、控えた方がよいでしょう。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸が逆流して食道に炎症を起こす病気のことです。症状には、胸が焼ける感じ(胸焼け感)や、胸やみぞおち辺りの痛みが挙げられます。

原因としては、妊娠により子宮が大きくなることと、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることが考えられます。

大きくなった子宮により胃が持ち上げられて胃酸が逆流しやすくなり、また、黄体ホルモンの影響で消化器官の働きが抑制されることで、妊娠中の逆流性食道炎につながります。

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。緊急で治療が必要になることは多くありませんが、中には生理痛が重くなったり、貧血の原因にもなったりすることもあります。

妊娠中の子宮筋腫の合併で、おなかの張りを感じる場合があります。また、筋腫の位置によるため評価は難しいですが、早産や胎児の成長、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などにつながる可能性もあるため注意が必要です。

牽引痛

下腹部などに突っ張る感じがあるときは、牽引痛や円靭帯症候群による症状かもしれません。牽引痛は、子宮が大きくなるにつれて、子宮の外にある靭帯が引っ張られることにより痛みが発生します。

妊娠が進むにつれて自然と発生する痛みなので、基本的に心配しすぎる必要はありませんが、痛みが強い場合は、鎮痛薬を使用することもあります。

羊水過多症

羊水は赤ちゃんを保護する水分のことであり、エコー検査などで800ml以上と見られる場合は羊水過多症となります。

羊水が多いとおなかの膨満感につながり、張りを感じることがあります。また、息苦しさや吐き気、切迫早産となる場合もあります。

妊娠中期以降の羊水の成分はほとんどが赤ちゃんの尿であり、妊娠糖尿病など何らかの原因で尿量が増えることや、食道閉鎖(食道が行き止まり)があり、赤ちゃんが羊水を飲み込めないことが原因と考えられています。しかし原因の多くは特発性といって、原因不明とされます。

切迫早産

切迫早産とは早産になりかかっている状態のことです。妊娠22~36週におなかの張りを頻繁に感じる場合は注意が必要です。

他には下腹部の痛み(生理痛に似た痛み)や出血、破水などの症状も挙げられますので、少しでも思い当たることがあれば、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。

おなかがパンパンなときの対処法・対策

最後に、おなかがパンパンなときの対処法・対策について説明します。安静や水分摂取などその場でしやすいことから、食事など普段の生活で心がけられることをご紹介します。

安静にする

まずは安静にすることが大切です。30分ほど座ったり、可能であれば横になったりして楽な姿勢で過ごしましょう。これで治るようであれば、大きく心配する必要はないことが多いようです。

水分を取る

おなかの張りが便秘によるものであれば、便を柔らかくするために水を飲むことが大切です。また、妊娠中は水分不足になりやすいことや、水分は羊水の元にもなることなど、健康状態を維持する観点からも、普段からの水分補給を心がけておいた方がよいでしょう。

食物繊維や消化によいものを取る

普段の食生活においては、食物繊維が含まれたものや消化によいものを取ることが大切です。また、食事中はゆっくりと過ごすことも大切です。

反対に、油物や酸味の強いもの、甘いものなどはおなかの不快感につながるため避けた方がよいでしょう。食事のタイミングについては、就寝前は胃の負担になるため避けるのがおすすめです。

姿勢を定期的に変える

同じ姿勢を取り続けるとおなかの張りの原因になります。座ったり、横になったり、定期的に姿勢を変えながら安静に過ごすことが大切です。できる範囲で体を動かし、安静時はクッションを使って姿勢をサポートするなどもよいでしょう。

ただし、動きすぎたり、疲れたりしてもおなかの張りの原因になります。精神的なストレスも原因になるため、誰かに話を聞いてもらったり、リラックスして過ごしたりする時間を作ることも大切です。

こんなときは注意

おなかの張り以外に、以下のような症状を伴う場合は注意が必要です。いずれも早期に医師に診察してもらった方がよいでしょう。

  • 出血
  • 激痛
  • 張りが治らない
  • 張りが定期的に起こり、頻回にある

おなかの張りや痛みに加えて出血や激痛を伴うときは、胎盤が急に剥がれてしまう常位胎盤早期剥離や何か他の病気・症状が隠れている危険があります。

張りが治らなかったり、周期的にきたりする場合は、切迫早産の可能性があります。いずれにしても、これらが見られた場合はすぐにかかりつけの医師に診てもらいましょう。

まとめ

妊娠中期におなかがパンパンになるときは、生活習慣や妊娠に伴うことや、場合によっては病気が隠れていることなどが原因として考えられます。

少し安静にして治れば心配しすぎなくてもよいですが、周期的に痛みがあったり、激痛、出血を伴ったりする場合は、医師の診察を受けましょう。

他にも生活習慣を整えることや、同じ姿勢を取り続けないことも大切です。心配なときは「迷惑かな」と気にせずに、病院に連絡してくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。