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妊娠後期はしんどい...!息苦しいなどの特徴や原因・対策について説明

2023.10.12

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

妊娠後期にはさまざまな理由でしんどいと感じることがあります。しんどさの種類もいろいろあるので、原因や対処法も異なります。ここでは妊娠後期のしんどい症状の対処法を知りたい方のために、しんどさの特徴や原因、注意が必要な症状についても説明します。

妊娠後期のしんどさの特徴

妊娠後期にしんどいと感じる場合には、さまざまな理由があります。

具体的には、頭痛・腰痛・胸焼け・息苦しさ・尿漏れ・むくみ・かゆみ(妊娠性掻痒)・足元が見えにくくなる・恥骨痛 ・足の付け根がつる などの症状を感じる方が多いようです。中にはおなかがはち切れそうになるくらい張っていると感じる方もいます。

また、息切れや消化不良が起こる場合や、妊娠後期だと陣痛がいつ始まってもおかしくないこと、 疲れやすくなることでしんどいと感じる方や、 体が重くて動きづらいなどの理由からお風呂がしんどいと感じる方もいるようです 。

臨月(36週以降)だと不眠になったり、どんな姿勢でいてもつらかったりするでしょう。

妊娠後期でしんどいときの原因

妊娠後期にしんどいと感じる原因には、子宮による圧迫や血液量の変化による貧血、お産への精神的なプレッシャー、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など何らかの病気が隠れていることなどが挙げられます。

子宮による組織の圧迫

子宮が大きくなることによって、胃や腸などの消化器官だけでなく、横隔膜を通して肺などの臓器も圧迫されるため、呼吸が浅くなって息苦しいと感じる方もいます。

大きくなった子宮によって血管も圧迫されることから、脳や耳などへの血流が悪くなり、めまいなどの症状が現れることもあるかもしれません。

血液量増加による貧血

妊娠後期は赤ちゃんへの血液の供給が増えるため、血液量が増加します。しかし、赤血球の増加が伴わない場合があり、酸素が身体中に運ばれにくくなって貧血になることもあります。貧血によって、動悸や息切れ、倦怠感などの症状も現れるでしょう。

お産へのプレッシャー

出産が近づくに連れて、精神的なストレスや不安だけでなく、経済面の心配などからプレッシャーを感じている方もいます。

気づかないうちに呼吸が浅くなって、息苦しさを感じるケースもあります。

何らかの病気

妊娠後期のしんどさは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などが原因となっている場合があります。

妊娠高血圧症候群は 、妊娠前は高血圧ではなかった方が妊娠によって高血圧になる症状です。
ただ高血圧になるというだけでなく、子癇(けいれん)発作やHELLP症候群、常位胎盤早期剥離 などの合併症を起こす場合があります。特に子癇発作の前兆として、頭痛や目がチカチカする症状があります。

しんどさに加えて、頭痛や目がチカチカする子癇(けいれん)の前兆、吐き気やみぞおちの痛み、性器からの出血などを伴う場合は一度かかりつけ医に相談しましょう。

妊娠糖尿病に なると血糖値が高くなって尿糖が出ますが、最初のうちはわかりやすい自覚症状がなく、症状が進行したり、合併症が起こったりした際に症状が見られます。

進行すると、膀胱炎や腎盂腎炎、血管障害、脱水、意識障害などを合併する場合があり、妊婦さんでは流産・早産、羊水過多・過少、妊娠高血圧症候群なども合併する可能性があります。

妊娠後期でしんどいときの対処法

妊娠後期でしんどいときの対処法は、しんどさに種類によってさまざまです。ここでは対処法を一つずつ説明して、それぞれがどのようなしんどさの対策になるかをお伝えします。

人を頼る・相談する

しんどくて仕事や家事ができないときは、働いているお母さんなら職場で同じチームの人を頼ることや、上司に相談して業務を調整してもらうことが対処法になります。

妊娠後期にもなると、家事すらもつらいことが少なくありませんが、無理せずに家族などに頼ることが大切でしょう 。

最近ではネットスーパーによって外出せずに買い物ができます。近くに頼れる人がいない方は、代行サービスの利用も視野に入れてみるとよいでしょう。

また、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることもあります。友人や家族に話すことができるならそれでよいのですが、難しい場合は各自治体が設けている妊婦さん向けの専用窓口で相談してみてもよいでしょう。

骨盤ベルトや腹帯を使う

しんどさの原因が恥骨痛や足の付け根の痛み、腰痛などの場合は、骨盤ベルトや腹帯を使うと痛みが楽になることがあるでしょう。

骨盤周辺の支えになり、姿勢の安定に役立つことが期待できます。また、産後の使用においては、骨盤の位置を元に戻す方向や骨盤の固定へサポートしてくれます。

ただし、強く締めすぎると血流が悪くなったり、皮膚がかぶれたり、人によっては尿漏れの原因になったりします。腰ではなくおなかに巻くと息苦しいと感じることもあるので、使用したいときはかかりつけ医や看護師に相談して、使用方法を聞いておきましょう。

ストレッチやヨガをする

膝の痛みや恥骨痛、足の付け根の痛み、腰痛、血行不良などの対策、基礎体力の向上としてストレッチやマタニティヨガもおすすめです。

ストレッチやヨガにはさまざまな種類があります。それぞれ体のどこに良い動きなのか、また、お母さんの状態によってできるものとできないものがありますので、無理のない範囲から始めてみるとよいでしょう。

尿漏れが気になる方は骨盤底筋を鍛えるトレーニングで改善が期待できます。立った状態でかかとを上げるとお尻を締める動作になって骨盤底筋を鍛えられますので、隙間時間に無理のない範囲でトライしてみてはいかがでしょうか。 体を動かすことで、精神的なストレスが和らぐことも期待できます。

痛む場所などを温める

続いて腰痛などの痛み対策として、お風呂に入って体を温めることやカイロなどで患部を温めることも挙げられます。ただし、カイロの使用については低温やけどに注意してください。

食べ物や飲み物も、冷たいものは避けて温かいものを摂ると、血流が良くなって痛みが緩和されやすくなるでしょう。

消化に良いもの食べる

おなかあたりが気持ち悪い方や、吐き気などに悩まされている方は、消化に良いものを食べるとよいでしょう。

妊娠後期は大きくなった子宮が消化器官を圧迫していることによって、おなかのしんどさにつながっていることが考えられます。

消化に良いものはうどんやたまごがゆ、豆腐・ニンジン・大根などの野菜、ささみや白身魚などの脂分が少ない肉類などです。

反対に、キノコなどの食物繊維が多いものや、ベーコンやソーセージなどの脂分が多いものなどは消化に悪いため避けておいた方がよいでしょう。スパイスや辛いものなど、香辛料もおなかへの刺激になるため避けておいた方が無難です。

食事を小分けにする

おなかのしんどさや吐き気、胸焼けなどの対処法として、食事を小分けにすることが挙げられます。

一度に多く食べると胃酸の分泌が多くなったり、消化に時間がかかってしまったりするため、1日当たり5~6回に分けて少量ずつ食べるとよいでしょう。

おなかがいっぱいなときだけでなく、空腹になり過ぎると気持ち悪く感じてしまう場合があります。常にある程度はおなかに何か入っている状態を保つことを心がけるとよいでしょう。

食後の気持ち悪さには、あめやガムなどでリフレッシュすることもおすすめです。

リフレッシュをする

精神的なストレスを感じているときなどは、産後の準備や、趣味に触れる、お風呂にゆっくり入るなどのリフレッシュを取り入れるとよいでしょう。

散歩したり外を眺めたりして、出産後にお子さんとお出かけできそうなところを探したり、かわいいベビー用品を下見したりするだけでも気が紛れるかと思います。

軽く体を動かしたり、ストレッチしたり、好きな音楽を聴いたりしてもよいでしょう。

クッションや抱き枕を使う

妊娠後期や臨月になってどの姿勢でもつらいと感じる方は、クッションや抱き枕を活用するとよいでしょう。

クッションや大きな抱き枕に寄りかかると力を入れずに過ごせます。また、腰の後ろに敷くことで負担を減らすこともできるでしょう。

ただし、妊娠後期はホルモン分泌や子宮が大きくなっていることによって胃酸が逆流しやすくなっているため、クッションを使うといえど、食後の数時間は横になることは避けましょう。食後は体を起こした状態で寄りかかるように使うことがおすすめです。

少しだけ昼寝をする

不眠や眠気に悩まされる方は、20~30分ほどの仮眠を取ることが対策になります。夜に仮眠を取ると夜間に眠れなくなってしまうため、日中に眠くてつらいときは仮眠を取って、リフレッシュするとよいでしょう。

出産後は授乳など赤ちゃんに合わせて生活する必要があるため、まとまった睡眠を取りにくくなります。出産後の生活リズムを想定し、前向きに仮眠を取り入れる方もいます。

こんなときは要注意

妊娠後期でしんどいと感じるとき、以上でご紹介した方法で対処できるならよいのですが、以下のような症状が見られるときはかかりつけ医に相談しましょう。

・かゆみ
・子宮からの出血(性器出血)
・おしるし
・性器出血を伴う腹痛
・むくみ
・発熱
・妊娠高血圧腎症(自覚症状は頭痛や目のチカチカした感じなど)
・破水
・規則的な子宮収縮(痛みを伴う場合も)


妊娠性掻痒(にんしんせいそうよう)といって、妊娠による体調の変化からかゆみの症状が現れることがあります。濡れタオルで冷やしたり、保湿クリームを塗ったりするなどの対処法もありますが、症状がひどくて眠れないほどであれば、かかりつけ医に相談しましょう。

子宮や性器からの出血は、胎盤が剥がれた状態である常位胎盤早期剥離や、早産になりかけている状態の切迫早産、胎盤が子宮口を覆う前置胎盤、お産が近いことによるおしるしなどが原因として考えられます。いずれもすぐに対応が必要になることが多いため、一度かかりつけ医へ相談をしましょう。

妊娠高血圧腎症は妊娠高血圧症候群の悪化などで起こる症状であり、子癇(けいれん)発作などを起こす場合があります。むくみ も妊娠高血圧症候群が原因となっている場合があるため、注意が必要です。

破水や、10分おきなどの規則的な子宮の収縮は出産が近いことが想定されます。

まとめ

妊娠後期のさまざまなしんどさについて説明しました。いよいよ出産という時期なので、赤ちゃんが成長していることに伴って起こることや、出産に関係することが多いでしょう。

ただし、中には、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病やその合併症に伴うような病気と関連したしんどさもあるため、気になることやつらいと感じることはかかりつけ医に相談しておくことをおすすめします。

赤ちゃんと会えるまであともう少しです。お母さん自身も元気に過ごして、出産に備えてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。