1. HOME
  2. 記事一覧
  3. 【産後のイライラ】ガルガル期はいつまで?原因や対処法を解説

【産後のイライラ】ガルガル期はいつまで?原因や対処法を解説

2023.12.20

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「ちょっとしたことでパートナーにイライラする」
「なぜかイライラを抑えられない」

自分でもどうしたんだろうと思うくらい、産後はイライラを抑えられないというお母さんは少なくありません。

ここでは産後のイライラの特徴から原因、対策、パートナーに意識しておいてほしいこと、注意が必要な場合について説明していきます。

産後のイライラの特徴

まず、産後のイライラの特徴にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
ここではガルガル期と産後うつ病について説明します。

ガルガル期

ガルガル期は、産後のホルモンバランスの乱れにより、精神状態が不安定になって、ついイライラしてしまう時期のことです。

怒ってしまったり、つい感情的になってしまったり、子どもが他の人に触られていると不快な気持ちになったりするのはガルガル期の特徴といえるでしょう。これは、赤ちゃんを守るための母親の防衛反応が強く作用することも一因とされており、ガルガル期という名称も子どもを守るために動物が周囲を威嚇(いせき)することから由来していています。

マタニティブルーズ の一種としても知られていますが、ガルガル期は医学的な言葉ではありません。

産後うつ病

産後のイライラは、産後うつ病の症状の特徴でもあります。

お母さんが育児や家事などを一人で抱え込んでしまって、思い通りにいかない状況にイライラしたり、喉がつかえたりする場合、産後うつ病の可能性があるかもしれません。

また、産後うつ病ではイライラ以外にも症状がみられることがあります。夜に眠れない、食欲が増える、もしくは食欲が減った、ふと無気力になる、急に悲しい気持ちになるなど、イライラと一緒に別の変化がある場合も産後うつ病の可能性があるかもしれません。

産後のイライラの原因

では、どのようなことが原因で産後のイライラが起こるのでしょうか。
ここではホルモンバランスの変化とストレスに着目して説明します。

ホルモンバランスの変化

妊娠中と産後ではホルモンバランスが異なるため、その変化によって精神状態が不安定になりやすいことが予想されます。

妊娠中に多く分泌される女性ホルモン(黄体ホルモン:プロゲステロン、卵胞ホルモン:エストロゲン )は、どちらも女性の身体面と精神面に影響を及ぼすものです。

産後に女性ホルモンが減少することでさまざまなトラブルが見られるようになり、そのトラブルの中の一つに産後のイライラが挙げられます。

ストレス

ストレスを感じることで産後うつ病になる場合があります。産後は慣れない育児に対するプレッシャーのような精神的なものから、子どもの夜泣きで睡眠不足になったり、疲労がうまく取れなかったりと肉体的なストレスも感じる時期です。

日中は一人で育児を行うお母さんも多く、社会からの孤立感や孤独感から焦りを感じやすく、1日誰とも会話しないで過ごす時間が増えるので、うまくストレスを発散できないこともあると思います。

自分では大丈夫と思っていても、いつの間にかずっと気分が晴れずに、イライラしたりうつになったりする場合もあるでしょう。

産後のイライラの対策

ここからは産後のイライラの対策方法について紹介します。無理をしすぎずに周りの人を頼ることや、休息を取ることなどが大切です。

周りの人を頼る

近くに家族が住んでいる方は、無理をせずに頼ってみることを考えてみましょう。赤ちゃんを家族以外の人に見てもらうことに不安を感じるかと思いますが、お母さん自身が休む時間やイライラしないように気分転換の時間を確保することが大切になるでしょう。

また、友人とお話をすることでイライラが紛れることもあるでしょう。直接会うのが難しいときは電話やメッセージのやり取りでもよいので、友人を頼ることも対策の一つといえます。

近隣に頼れる人がいない場合は、地域の保健センターや助産院などで相談するとアドバイスをもらえる場合があります。助産師による自宅訪問を利用することができる場合もありますので、一度ご検討してみるとよいでしょう。

リフレッシュをする

赤ちゃんが寝ている間や、誰かに家事や育児を任せられるときなどは、できるだけリフレッシュの時間を取るようにしましょう。

好きな音楽や映画などの趣味に触れたり、雑誌を読んだり、一人でカフェに行ってみたり、思い切って好きなことをしてみると、ストレスを発散でき、家事や育児の効率アップや精神的な安定につながることがあります。

「できる間に家事をしておかないと…!」と焦ってしまう気持ちもあるかと思いますが、赤ちゃんや家族のために、そしてお母さんが休息を優先することが大切ということを覚えておいてくださいね。

イライラしやすい時期であることを周囲に伝える

素直にイライラしやすい時期であることを周囲に伝えるだけで、気の持ちようが違うものです。伝えておけば、周りからも「なぜイライラしているのか」がわかるため、余計な心配をかけなくて済むでしょう。

特にガルガル期は、パートナーからの理解を得ておくことが大切といわれています。育児で大変な時期を一緒に乗り越えるためにも、普段から気をつけていることや、どのようなときにイライラしやすいのかを伝えておきましょう。

産後でイライラしやすいときは、パートナーにとっても大変な時期です。普段から「ありがとう」や「ごめんなさい」といった気持ちを伝えることも非常に重要ですので、心がけてみてくださいね。

手抜きできるところは手抜きをする

育児や家事などは全てお母さんの仕事だと思って、1人で完璧にこなそうと思う方もおられますが、問題がないところは少しずつ手抜きをしてみましょう。

例えば、時短ができる家電があるなら買ってみる、宅配や家事代行を利用してみるなど、手抜きをすることによって、時間的な余裕だけでなく、精神的にも楽になるところがあるでしょう。

睡眠不足を解消する・疲れを取る

産後の育児によって、まとまった睡眠時間を確保することは難しいかと思いますが、赤ちゃんが寝ている時間やパートナーが赤ちゃんを見てくれている間は、少しでも睡眠に充てるとよいでしょう。

人間の体は睡眠によってホルモンバランスの調整や記憶の整理、ストレス解消など、心と体のメンテナンスを行っています。短時間の睡眠であっても、疲労回復が可能であることもあります。

また、たとえ眠れなくても、目を閉じて過ごすだけで脳を休めることは可能です。セルフマッサージやストレッチをして体をほぐすなど、疲れを取るための行動も心がけましょう。

リラックスできる呼吸法を試す

呼吸を意識することは赤ちゃんがいても取り組みやすいものです。日々の生活において、気づいたら呼吸が浅くなっていた、という方も多いのではないでしょうか。

取り組みやすいものとしては、ヨガの基本になっている月と太陽の呼吸法がおすすめです。以下の手順で試すことができるため、手順だけでも読んでみてくださいね。

1:あぐらを組んで両方の手のひらを上に向け、両膝に乗せる
2:右手の人差し指を眉間に置いたら、そのまま右手の親指で右鼻を押さえる
3:左鼻で息を吸ったら息を止めて、押さえる指を変えて、右鼻から息を吐く
4:右鼻から息を吸ったら息を止めて、押さえる指を変えて、左鼻から吐く

手順3~4を1セットとして、3セットから4セットほど行いましょう。
月と太陽の呼吸法は、酸素を体の隅々まで巡らせることができ、イライラするときだけでなく、眠れないときや頭痛がするときにもおすすめです。

医師に漢方の使用を相談する

医療機関によっては、マタニティブルーズの対処法として漢方を処方しているところがあります。セルフケアでは効果が感じない方は、医療機関を頼ることも視野に入れてみるとよいでしょう。

漢方の具体例としては、産後の体調を全般的にサポートしてくれる「芎帰調血飲 (キュウキチョウケツイン)」、気持ちの浮き沈みによいとされる「女神散 (ニョシンサン)」、貧血や精神的な不安がある方に用いられる「加味帰脾湯 (カミキヒトウ)」、イライラだけでなく不眠の方に処方される「抑肝散 (ヨクカンサン)」などが挙げられます。

使用については個人の状態によりますので、自己判断で使用せず、気になる方はかかりつけ医への相談から始めてみてはいかがでしょうか。

パートナーにできること

産後にイライラしてしまうのはお母さんだけの問題ではなく、一緒に過ごしているパートナーにとっても重要な問題です。パートナーにできることとして、産後の心身状態はお母さん自身でコントロールできないくらいに変化が激しいものと、まずは認識してもらうことが大切です。

他には、お母さんに代わってできることは率先してやってみる、または育児や生活の方針を決めるときには積極的に情報収集をして話し合いに参加するなど、このような姿勢があるだけでお母さんの心持ちは大きく違うでしょう。

また、育児期間は意外と短いものです。この期間の過ごし方によって、これからの家族の信頼関係に影響が出ることも、パートナーが認識しておくべきことといえるでしょう。

こんなときは注意が必要

ただのイライラだと思っていても、注意が必要な場合もあります。
ここでは産後うつ病や、あまり起こることではないものの甲状腺機能の低下について説明します。

産後うつ病の兆候が見られるとき

ふと悲しくなる、落ち込む、興味や喜びが薄れる、不安や焦りを感じる、自分を責めてしまうなど、特に思い当たる節はないにも関わらずネガティブな気持ちに襲われる場合は、産後うつ病につながる可能性があります。

産後うつ病では、眠れなくなったり、食欲が低下したりといった身体的な症状も起こりますので、精神症状と一緒に身体症状も見られる場合は注意が必要です。発症時期は、産後の3週間~8週間あたり(産褥期と呼ばれる期間)の方や3カ月~6カ月の方など、個人差があります。

産後うつ病やイライラから夫婦仲に亀裂が入ってしまうと、産後クライシスへと陥ってしまう場合もあります。少しでも気になることがある場合はかかりつけ医や精神科に相談することをおすすめします。

甲状腺機能低下症の兆候が見られるとき

体内で新陳代謝の調整を行っている甲状腺ですが、産後に甲状腺機能が低下することにより産後うつ病と似た症状が見られる場合があります。

甲状腺機能低下症の症状には抑うつ・無気力感・倦怠感などがあり、また、不眠・むくみ・体重増加・寒さを感じやすくなるなどの身体症状も挙げられます。

甲状腺機能低下症は、意識障害などにもつながる疾病なので 、元々甲状腺の疾患を有している方はもちろん、そうでない方でも思い当たる節がある場合は、かかりつけ医に相談しておきましょう。

まとめ

産後のイライラは、ホルモンバランスの変化や育児による環境の変化により起こりやすいものです。

一般的にはガルガル期と呼ばれることもある産後のイライラですが、産後うつ病の可能性があったり、夫婦仲のすれ違いから産後クライシスに陥ることもあったりと、軽視できない問題でもあります。

周りの人やサービスを頼って、話せることは素直にパートナーに話してくださいね。一緒に乗り越えれば、温かい家庭を築けることでしょう。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。