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【産後の肌荒れ】原因や対策などを解説

2024.01.10

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

「出産後に肌がボロボロになった感じがする」
「産後から吹き出物が目立つようになった」

産後は体調や環境の変化からさまざまなマイナートラブルが起こるものですが、その中でも肌のトラブルに悩まされる方は多いのではないでしょうか。

ここでは産後の肌荒れについて、その特徴・原因・対策などについて説明します。

産後の肌荒れの特徴

妊娠中だけでなく産後にも、吹き出物・シミ・そばかす・かゆみ・ザラつき・乾燥などといったさまざまな肌トラブルに悩まされるお母さんがおられます。

産後は、出産によって体だけでなく環境も変化する時期なので、その影響が肌にも現れることは珍しくなく、顔だけでなく太ももやお尻・腕・指先など全身に肌トラブルが現れる方もいるでしょう。

今までのスキンケアを続けていても症状が改善しないと感じる方も多く、肌のくすみなどから、鏡を見るのがおっくうになってしまう方も少なくありません。

産後の肌荒れがいつまで続くか不安になる方もおられますが、多くは半年~1年ほどで治る方が多いようです。

産後の肌荒れの原因

では、どのようなことが産後の肌荒れの原因となるのでしょうか。

ここではホルモンバランスなど体内の変化、育児による睡眠不足や食生活の乱れなど環境や外的な要因について説明します。

ホルモンバランスの変化

妊娠中は妊娠を維持するために、黄体ホルモン(プロゲステロン)や卵胞ホルモン(エストロゲン)などの女性ホルモンが多く分泌されています。

出産を経ると、これら女性ホルモンの分泌が減少し、肌のバリア機能の低下や、ターンオーバーの乱れによって肌荒れが起こると考えられています。

この女性ホルモンにより、妊娠中は「肌の調子が良くなった」と感じる方もいますが、出産後は妊娠前の分泌量と同じくらいにまで低下するため、お肌の調子にも変化が現れるのです。

肌のターンオーバーは古い表皮が垢などになって押し出され、肌の細胞が徐々に新しいものへと置き換わっていく現象ですが、ホルモンバランスの変化でターンオーバーが乱れると、古い細胞が入れ替わらなくなり、吹き出物やかさつきなどのトラブルが起こる原因になります。

ストレス

精神的ストレスによっても、ターンオーバーの乱れ、バリア機能の低下などが起こります。

また、精神的にストレスがかかると、自律神経の乱れから皮脂分泌が過剰になり、肌が荒れやすくなります。

特に、あご・頬・耳下などのフェイスラインにニキビができる場合は、ストレスによるものかもしれません。

睡眠不足

人間の体は、寝ている間に疲労の回復や成長ホルモンの分泌、記憶の整理などさまざまなことを行っています。

皮膚の細胞分裂や再生、ターンオーバーも睡眠中に行われているため、出産後のお母さんのように、十分な睡眠時間を取ることが難しい日が続いてしまうと肌が荒れやすくなってしまいます。

また、睡眠が足りていないと食欲をコントロールするホルモンであるレプチン が作用しにくくなり、その反対に食欲を増進させるグレリンの作用が強くなるため、つい食べ過ぎてしまうことがあるかもしれません。睡眠が食生活の乱れを起こし、間接的に肌荒れの原因となることも考えられるでしょう。

乱れた食生活

食生活が乱れる原因となる食べ物には、脂っこい食べ物や甘いもの、刺激物であるカフェインや香辛料、お酒に含まれるアルコールなどが挙げられます。

脂質や糖質は体にとってエネルギーとなるものですが、過剰に摂取すると皮脂の分泌が促進されて毛穴が詰まりやすくなったり、ニキビや肌荒れなどの原因になったりします。
カフェインや香辛料も同様に、皮脂分泌が増える要因のひとつなので摂取には注意が必要です。

また、肌荒れの原因には、酸化 があります。この酸化を抑える作用(抗酸化作用)を持つ栄養素にビタミンCが挙げられるのですが、カフェインや後述するアルコールなどを多く摂取してしまい、その結果ビタミンCの摂取量が減少してしまうことも考えられるでしょう。

お酒も、適量を超えるとアルコールの分解のために水分が消費されて肌が乾燥しやすくなったり、美肌に必要なビタミンB群やビタミンCが消費されてしまったりと、肌荒れの原因になります。

便秘・肩こり

一見、肌荒れと遠く感じる便秘と肩こりですが、どちらも肌と関係があるものです。便秘によって便が体内に止まると悪玉菌が増えて有害物質が増える原因になります。そのため、増えた有害物質が腸内で再吸収されてしまうと、肌荒れにつながると考えられています。

肩こりにおいては、血流が肌荒れと関係しています。血流が滞ることによって老廃物を流しきれなくなり、吹き出物やくすみの原因になることが考えられています。

出産後はどうしても生活リズムや食習慣が乱れやすく、授乳や抱っこなどの姿勢で首や肩がこってしまうため、肌荒れの原因として便秘や肩こりが関係しているお母さんもおられます。

産後の肌荒れの対策

ここからは産後の肌荒れ対策としてできることを説明します。

産後の生活に取り入れるには難しいものもありますが、いずれも「こうしなければいけない」と思う必要はありません。気にしすぎるとかえってストレスとなる場合もありますので、できる範囲から少しずつ取り入れてみてくださいね。

十分な睡眠

授乳や夜泣きなど、産後の生活は赤ちゃんに左右されるため簡単なことではありませんが、できる範囲で睡眠時間を確保しましょう。

睡眠を十分に取ることによって、成長ホルモンが分泌され、肌のターンオーバーが正常になります。また、睡眠によってストレス解消にもつながるでしょう。

家事や育児をパートナーと一緒に行い、パートナーでもできる部分は頼んだり、近くに家族が住んでいる方は協力可能かどうか相談したりしましょう。赤ちゃんやパートナーにとっても、お母さんが少しでも休めることが大切です。

赤ちゃんの睡眠周期は成人よりも短いため、一緒に寝ても赤ちゃんの方が短い時間で起きてしまうものです。まとまった睡眠時間を確保することは難しくても、数十分などの隙間時間で寝たり、目を閉じたりするだけでも、休息になります。

睡眠時間だけでなく、夜は温いお湯につかることや、寝る前に軽いストレッチをするなどの工夫も効果的でしょう。

栄養バランスの取れた食事

肌は体の一番外側にある臓器という考え方があります。キレイになるためには栄養バランスの良い食事は欠かせません。

具体的には、タンパク質・ビタミンE・ビタミンB群・ビタミンA・ビタミンCなどの摂取がおすすめです。

それぞれを含む代表的な食品は、以下の通りです。
・タンパク質…肉、魚、卵など
・ビタミンE …落花生 、かぼちゃ など
・ビタミンB群…かつお 、豚肉 、豚レバー など
・ビタミンA…卵黄 、にんじん 、ほうれん草 など
・ビタミンC…みかん 、パプリカ 、キャベツ 、キウイフルーツ など

また、便秘対策になる水溶性食物繊維(のり・こんにゃく・みかんなど)、母乳に欠かせないカルシウム(牛乳・魚・豆腐など)、貧血対策のための鉄分(レバー・赤身肉・あさりなど)などの摂取もおすすめです。

細胞分裂や造血をサポートする栄養素として有名な葉酸は、ビタミンB群に含まれます。
葉酸はのり・日本茶 ・ドライマンゴー などから摂取が可能です。

不足しやすい栄養素はサプリメントで補うことも考えてみましょう。ただし、複数の種類を飲んで過剰摂取になる場合があるため、気になる方は、薬剤師に相談するのがおすすめです。

ストレス発散

ストレス発散のためには、睡眠を取ることや趣味に触れること、好きな音楽を聴くこと、好きな映画を観ることが挙げられます。

パートナーや家族に赤ちゃんを見てもらえる場合は、マッサージを受けに行って肩こりなどのケアをすることもよいでしょう。

赤ちゃんが寝ている間に雑誌を読んだり、自分へのご褒美として好きなスイーツを用意しておいたりすることもよいリフレッシュになりそうですね。

同じように子育てをしてる友人とおしゃべりをすると、育児について共感が得られてストレス発散になるでしょう。実際に会えなくても、電話やメッセージでやりとりをするのもよいかもしれません。

ストレス自体をため込まないために、完璧を求めすぎないことも大切です。
毎日の家事や育児で「こうしなければならない」と思うことが多い方は、少しずつ手抜きができるところを探してみてはいかがでしょうか。

保湿・UV対策

産後は生活リズムの乱れやストレスなどで皮膚のバリア機能が低下しやすいため、保湿など日々のスキンケア、お出かけのときには紫外線対策などをしておくことが大切です。

「子育て中は主に屋内にいることが多いため紫外線対策はしなくても良い」と捉える方もおられますが、窓から入る光でも紫外線を受けることが考えられます。

また、ターンオーバーの乱れによって肌の乾燥が起こりやすい状態になってることも考えられるため、さらに肌荒れを起こさないためにも、こまめに保湿をしておきましょう。

化粧水や美容液、加湿器などを使って、適度に潤いを保つことが大切です。化粧水などを選ぶ際にはパラベンフリー(防腐剤なし)やアルコールフリーなど、日焼け止めを買うときは紫外線吸収剤が入っていないものやノンケミカルなものを選ぶと、肌への刺激にも配慮できてよいでしょう。

「育児でスキンケアに時間をかけていられない!」と感じるお母さんは、スプレータイプの化粧水や、顔に貼り付けるだけで使用できる顔パック、オールインワンのタイプのアイテムなどを使用してみてはいかがでしょうか。

こんなときは病院へ

産後の肌荒れが1年以上などの長期にわたって続く場合は、他に原因があるかもしれないため、皮膚科やかかりつけ医に相談することをおすすめします。

ここまでご紹介した原因や対策などに心当たりを感じる方もいるかと思いますが、肌荒れの原因は、厳密には言えば人それぞれです。

産後から1年未満であっても、症状で気になることがある方は、医師に相談した方が安心できるかと思います。

まとめ

産後の肌荒れは、ホルモンバランスや生活リズムの変化、食生活の乱れ、慣れない育児によるストレスなど、さまざまな要因によって引き起こされるものです。

まずは心当たりのあるものや取り組みやすいものから、少しずつ改善を試みてみましょう。

産後はまだまだ大変な時期です。ご自分をいたわりながら過ごしてくださいね。

記事監修

阿部一也先生

日本産科婦人科学会専門医

プロフィール

2009年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。2009年板橋中央総合病院初期研修医。2011年同院産婦人科入局。日本産科婦人科学会専門医として、妊婦健診はもちろんのこと、分娩や産まれたばかりの新生児、切迫流早産の管理などにも対応。産婦人科領域においての不安、心配や疑問に的確にアドバイスできるよう、記事の監修や執筆にもあたっている。